HLA多型

HLA遺伝子は、第6染色体短腕部のp21.3の約4,000kbp内に存在するMHC領域によりコードされた遺伝子群により構成され、HLA分子はこれら遺伝子群に支配される遺伝子産物である.このMHC領域にはクラスI遺伝子領域に存在するHLA-A、HLA-B、HLA-C遺伝子と、HLAクラスII遺伝子領域に存在するHLA-DP、HLA-DQ、HLA-DR遺伝子などが存在する。これらはすべてHLA遺伝子と呼ぶことができる。このようにHLA遺伝子には多くの種類があり、これを「多遺伝子性」と呼ぶ。

HLAはヒトの組織適合性抗原で、自己非自己の識別に有用な分子であり、MHC遺伝子発見の経緯からMHC抗原(ヒトではHLA抗原)は主要な移植抗原と考えられている。しかしHLAが多遺伝子性であるだけでは、全てのヒトを識別するのは難しい。これを可能にするのが「HLA多型」である。各HLA遺伝子には「対立遺伝子」と呼ばれる遺伝子が多く存在し、これがHLA遺伝子に「多型性」を与えている。

HLAの表記方法には抗原名と遺伝子型があり、基本的に連動した表記方法となっている。HLA抗原名は、その抗原に対する抗体が検出されるものに対して付され、これらの命名はWHOの命名委員会が行っている。またHLA遺伝子型表記方法については1987年よりWHOの国際組織適合性ワークショップにて認定され、2010年に現行の表記方法となった(http://hla.alleles.org/nomenclature/naming.html)。

またHLA抗原には、ブロード抗原、スプリット抗原といわれるものも存在する。たとえばHLA-B40に含まれるHLA-B*40:01、HLA-B*40:07はHLA-B60にも分類される。このとき、HLA-B40をブロード抗原、HLA-B60はHLA-B40のスプリット抗原であるといえる。逆は成立しない。詳細は以下の参考論文を参照されたい。

 

参考資料

●移植・輸血検査学(猪子英俊・笹月健彦・十字猛夫監修)(2012年第2刷、講談社)

●日本組織適合性学会誌/23 巻 (2016) 2 号 総説 HLAの基礎知識1 小川公明 https://doi.org/10.12667/mhc.23.115

●日本組織適合性学会誌  28 巻 2 号 p. 83-93(2021)J-STAGE掲載 HLA DNAタイピング検査技術:東史啓 https://doi.org/10.12667/mhc.28.83

●日本組織適合性学会誌/23 巻 (2016) 3 号 総説 HLAの基礎知識2 小川公明https://doi.org/10.12667/mhc.23.185

●日本組織適合性学会誌 22 巻 (2015) 2 号 平成27年度認定HLA検査技術者講習会テキスト 次世代シークエンシングに基づくHLAゲノム・遺伝子解析 椎名隆 https://doi.org/10.12667/mhc.22.84

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