理事長挨拶

 この度、新しく日本組織適合性学会の理事長を拝命しました。本学会は1972年に日本組織適合性研究会として発足し、1992年に現在の日本組織適合性学会へ名称を変更、2020年に一般社団法人化しました。この50余年の歴史の中で、「組織適合性および免疫遺伝学に関する研究の推進」ならびに「新しい組織適合性検査技術の開発と普及」に、本学会は尽力してきました。

 前者の「組織適合性および免疫遺伝学に関する研究の推進」について。ヒト主要組織適合性複合体(HLA)は極めて多型性に富みます。造血細胞移植や臓器移植において、患者とドナーのHLAが異なると拒絶や移植片対宿主病の発症危険度が増します。またいくつかの疾患では、特定のHLAを有すると発症率が高くなります。ある地域に住む人々のHLAを調べることで、人類集団の起源と形成を明らかにできます。そしてHLAの違いにより個人識別も可能になります。これらの研究成果を発表、共有する場として、本学会では大会(学術集会)を開催し、学会誌を発行してきました。また、国際HLA・免疫遺伝学ワークショップ(IHIWS)への参加を通じて、海外データを共有、解析する国際プロジェクトも推進してきました。

 後者の「新しい組織適合性検査技術の開発と普及」について。HLAはその高度な多型性から、各個人のHLAを正確に区別する(正しくタイピングする)ことは決して容易ではありません。そこで本学会では、認定HLA検査技術者や認定組織適合性検査施設などの認定制度を確立し、QCワークショップを毎年開催して、我が国におけるHLAタイピングの精度管理と標準化を行ってきました。このことは移植医療や再生医療の進歩に大きく貢献しています。

 本学会の特色として、会員が臨床医、基礎研究者、検査技師などの多職種で構成されていることが挙げられます。私はこれら移植医、HLA研究者、HLA検査技師の連携こそが、本学会の生命線であると考えています。そして本学会をさらに発展させるためには、本学会活動の学問的重要性と社会貢献性を、一人でも多くの若い医師、研究者、技師らに知ってもらう必要があると考えています。そのためには、開かれた学会でなくてはなりません。わくわくするような大会(学術集会)を開催し、魅力的な教育セミナーを企画し、認定制度のさらなる改良を進めてまいります。どうか会員内外からの忌憚のないご意見、ご指導を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。

 

2024年9月

一般社団法人日本組織適合性学会

理事長 村田 誠

 

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